はじめに
5年間、腰と足の症状に悩んでいた方です。 複数の病院でブロック注射を受けても改善せず、仕事の後は歩くとお尻が痛くなり、力も入りにくくなるのでよく転ぶということでした。
エコーガイド下でL4・L5神経根にはり低周波刺激を行ったところ、初回施術直後にNRS 10が0になりました。1週後痛みは少し出てきましたが、大変満足していただきました。
このように、注射や他の治療で改善しないのに、エコーガイド下腰椎神経根はり低周波刺激で劇的に改善するケースを経験します。
患者情報
- 50代男性
- 5年前に腰痛を発症
- 病院診断:腰椎外側ヘルニア、椎間孔狭窄
- ペインクリニック・複数の整形外科を受診 → ブロック注射無効
- 鍼灸歴約20年(前の先生が閉院)
主訴
- 左腰の痛み
- 左臀部〜大腿〜下腿のしびれ
- 踏ん張れず毎日転倒するほどの歩行障害
- NRS 10/10
初診時所見
SLR:55° で殿部に痛み
感覚(Sensory Cold)
- スネ外側(L5):1/10(著明低下)
- スネ内側(L4):10/10(正常)
- 大腿内側(LT):5/10
筋力(MMT)
- TA(前脛骨筋):3
- EHL(長母趾伸筋):4
- QUAD(大腿四頭筋):4
- OE(足趾外反):3
- Gme(中殿筋):4
L5領域の感覚がほぼ消失、TAも3と筋力低下が著明。
評価
- L4/L5神経根の問題か?
ブロック注射が効かなかった理由として、外側陥凹での圧迫に薬液が到達しにくかったことが考えられます。
施術
第1回:L4・L5神経根
| 部位 | 強度 | 反応 |
|---|---|---|
| L4R | 0.5mA | repro 膝蓋下 |
| L5R | 1.0mA | repro スネ外側 |
通電時に響きが得られたので、成功と判断しました。
経過
疼痛(NRS)
- 初診時:10/10
- 第1回施術直後:0/10
- 施術4時間後:3/10
- 施術1週後:4/10
施術直後に痛みが0になったので患者さんも驚かれていました。
1週後の変化
筋力
- TA:3 → 5(正常に回復)
- OE:3 → 4(改善)
- EHL:4 → 4(不変)
感覚(Cold test)
- スネ外側(L5):1/10 → 8/10(著明改善)
改善点:スネの痛み消失 残存:臀部の痛み
痛みが減っただけでなく、感覚と筋力がここまで回復したのは、神経機能そのものの改善を示していると考えています。
考察
なぜブロック注射が効かなかったのか?
注射方法を特定できないが、神経根ブロックだとすると外側陥凹での狭窄まで薬液が届かなかったのか? 椎間孔硬膜外ブロックだと効果あるのか? 神経根へのPRFは効果を期待できそう。
なぜエコーガイド下腰椎神経根はり低周波刺激で痛み・筋力・感覚低下が改善したのか?
前提
- ブロック注射は効果がなかった
- 運動療法は効果なし
- 通常の鍼治療では効果はあるが限定的
- エコーガイド下腰椎神経根はり低周波刺激で即時的に痛みが消失(時間限定)
仮説
- DRG近傍への、鍼や低周波の機械的刺激が、異常発火を抑制する
- DRG近傍へなるべく鍼先を近づけることが必要
- DRG近傍へ刺激が入ると、デルマトーム上に放散する
施術法の意義
- エコーで神経を確認しながら安全にピンポイントで刺入できる
- 通電時の症状再現でDRG刺激を確認できる
- 改善した部分と残存する部分を見極めて、次の治療計画を立てられる
- ブロック注射や薬になるべく頼らず、痛みを軽減できる選択肢になりうる
まとめ
- ブロック注射が効かない=治らない、ではない
- 「どこに」「どうやって」アプローチするかで結果が大きく変わる
- 痛みだけでなく、感覚・筋力の回復も期待できる
用語解説
- NRS:痛みの強さを0〜10で表す指標。0は痛みなし、10は最大の痛み
- 椎間孔狭窄:背骨から神経が出てくるトンネル(椎間孔)が狭くなること
- 外側ヘルニア:椎間板が横方向に飛び出し、通常と異なる部位で神経を圧迫するタイプ
- SLR:仰向けで足をまっすぐ上げる検査。神経根症の評価に使う
- MMT:筋力を0〜5の6段階で評価する検査。5が正常
- Electroacupuncture(はり低周波刺激):鍼に微弱な電流を流す治療法