こんにちは!鈴木です。
今回は、「その病気って聞いたことあるけどなんだろう?」をわかりやすく解説したいと思います。
先日、K-POP歌手であるBOAさんが膝関節の「骨壊死(こつえし)」による活動休止が公表されました。
このニュースをきっかけに、「骨壊死」という病気を知り、ご自身の「なかなか治らない膝の痛み」と重ねて不安に感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで今回は、「膝の骨壊死」とはどんな病気かを分かりやすく解説していきます。
目次
そもそも「骨壊死」ってどんな状態?
「壊死」という言葉から「骨が腐る」という怖いイメージを持つかもしれませんが、少し違います。
骨壊死とは、骨に栄養を送る血管の血流が滞ることで、骨の組織が死んでしまう(壊死する)状態のこと。血が通わなくなった骨はもろくなり、体重という圧力に耐えきれず潰れてしまうことで、激しい痛みや関節の変形を引き起こします。
2種類ある骨壊死の原因
膝の骨壊死は、主に太ももの骨の膝に近い方の先端(大腿骨顆部)に起こります。代表的なのは次の2つのタイプです。
タイプ1:特発性大腿骨顆部骨壊死
はっきりとした原因が分からず、ある日突然、激しい痛みで発症するのが特徴です。
- どんな人に多い?:60歳以上の女性に多く見られます。
- 原因は?:以前は血流障害が主因と考えられていましたが、近年の研究では、骨がもろくなった状態で生じる「気づかないほどの小さな骨折(脆弱性骨折)」が引き金になっているという説が有力です。(※参考文献: 日本整形外科学会診療ガイドライン委員会 特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019)
- 症状の特徴:特に夜寝ている時や、安静にしている時にズキズキと痛む「夜間痛」「安静時痛」がみられます。
タイプ2:二次性骨壊死
こちらは、ステロイド剤の多量使用やアルコールの多飲など、原因がはっきりしているタイプです。比較的若い方にも起こる可能性があります。
なぜBOAさんが骨壊死に?考えられる要因とは
ここで、多くの方が疑問に思うであろう「なぜBOAさんのような方が骨壊死になったのか?」という点について、身体の専門家として、一般論から考えられる要因を考察してみたいと思います。
【注意】
これは、ご本人が原因を公表されていない以上、あくまで「骨壊死という病気の背景に何があるのか」という一般論からの推測です。BOAさん個人に当てはまるものではなく、特定の原因を断定するものでは決してありません。皆さまがご自身の身体と向き合う一つのきっかけとしてお読みいただければ幸いです。
骨壊死の原因には、前述したステロイドやアルコールといった要因のほかに、「関節への機械的ストレス(物理的な負荷)」が関わっている可能性も指摘されています。
要因:繰り返される衝撃と微細な損傷の蓄積
BOAさんのようなトップレベルのアーティストは、私たちの想像を超えた高強度のトレーニングとパフォーマンスを日々行っています。激しいダンス、ジャンプ、急な方向転換といった動きは、股関節や膝関節に繰り返し強い衝撃を与えます。
このような負荷が長年にわたって蓄積すると、関節の骨に微細な損傷が起こる可能性があります。この小さな損傷が修復される過程で、骨への血流が一時的に悪くなったり、あるいは損傷が骨の強度低下につながり、結果として骨壊死を引き起こす一因になるのではないか、と考えられています。
これは、激しいトレーニングを行うアスリートにも共通して見られるリスクの一つです。
エコーではどう見える?
膝の骨壊死で最も厄介なのは、発症初期にはレントゲンに写らないことが多いという点です。「病院でレントゲンを撮ったけど、異常なしと言われた。でも、ものすごく痛い…」という可能性も考えられます
骨壊死は骨実質部分(骨の中)から血流が途絶えることで細胞が死んでいきます(壊死)進行したあとで骨皮質(表面)に影響が及びます。
よって、超音波エコーで見えるのは骨表面の異常なので早期発見となるとなかなか難しいのが現状です。
エコーで捉える!骨壊死の危険なサイン
超音波エコーで初期発見は難しいところではありますが、骨に異常が現れれば見えてくるものもあります。
骨壊死が疑われる場合、エコー画面には次のような特徴的なサインが現れます。
- ① 骨表面の凹みや乱れ:健康な骨の表面は滑らかな白い線として映りますが、骨壊死で骨がもろくなると、表面に「凹み(陥没)」や「デコボコした乱れ」として観察されます。これはレントゲンでは見えない初期の変化を捉える重要な手がかりです。
- ② 関節内の水(関節液):強い炎症が起こると、膝に水が溜まります。エコーではこの溜まった水を「黒い影」として明確に確認できます。
- ③ 炎症反応(血流の増加):エコーの特殊な機能(ドップラーモード)を使うと、炎症が起きている場所に血液が集まっている様子が「赤や青のシグナル」として映し出されます。これにより、痛みの原因となっている炎症の強さを客観的に評価できます。
以上に限らず超音波エコーで確認できる異常があった場合には、整形外科のドクターにご紹介もさせていただいております。
まとめ:その膝の痛み、一人で悩まないでください
BOAさんの告白をきっかけに解説した「膝の骨壊死」。
大切なのは、「いつもの膝痛だろう」「レントゲンで異常なしだったから大丈夫」と自己判断で放置しないことです。
膝の骨壊死の発生頻度は多くはない症例ですが、著名人が患ったものでしたので取り上げました。
膝の痛みは日常生活の質を大きく下げかねません。
当院では、あなたの痛みの原因がどこにあるのかを超音波エコーも活用して徹底的に探り、必要であれば医療機関と連携しながら施術をおこなっていきます
「この痛み、原因が分からなくて不安…」
「病院に行ったけど、痛みが変わらない…」
そんな時は、ぜひ一度ご相談ください。全力でサポートさせていただきます!
以下、当院の超音波エコーで観察し施術を行うポイントを解説しています。
併せてご覧ください
肉離れの多いハムストリングスのエコー観察方法について解説します
【参考文献】
- 特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン2019(改訂第3版)
発行:日本整形外科学会診療ガイドライン委員会, 特発性大腿骨頭壊死症診療ガイドライン策定委員会. 南江堂, 2019.(主に特発性骨壊死の病態に関する記述で参考にしました。)