こんにちは鈴木です。
「腰痛」は様々な患者様が経験する辛い症状です。
そんな腰痛もパターンがいくつかあるのでその1つを紹介していきます
目次
その場しのぎになっていませんか?「かがむと痛い」腰の悩み
- 朝、顔を洗う前かがみの姿勢が怖い
- デスクワークで床の物を拾おうとすると激痛が走る
- 靴下を履くなど、体を丸める動作を避けてしまう
- 中腰になった瞬間、腰に痛みが走り、しばらく動けない
- デスクワークで長く座っていられない
デスクワーク中心の生活や、小さなお子さんのいるご家庭も多い浦安、新浦安エリアでは、ふとした瞬間の「かがむと痛い」腰痛に悩まされている方が少なくありません。 その痛み、いつものことだと諦めたり、マッサージで一時的に紛らわしたりしていませんか?その場しのぎのケアでは、根本的な原因は解決されないことが多いです。
この記事では、なぜ「かがむ」と痛むのか、その原因を科学的な研究を基に解説し、当院が考える根本的な改善アプローチをご紹介します。
※説明する病態以外にも「筋筋膜性腰痛」などもありますが、今回は以下にフォーカスしていますのでご了承ください。
なぜ「かがむ」と痛いのか?椎間板に隠された力学的な真実
「かがむ」という単純な動作が、なぜ腰に激痛をもたらすのでしょうか。答えは、背骨のクッションである**「椎間板」にかかる圧力(内圧)**にあります。
椎間板の内圧に関するある著名な研究では、私たちが立っている時の圧力を100とすると、座って前かがみになる姿勢では、椎間板への圧力が185にまで急上昇することが示されています。
つまり、「かがむ」動作は、椎間板を後方へ強く押し出す力を生み、すでに傷ついている椎間板や、その近くにある神経を強烈に刺激してしまうのです。これが、「かがむと痛い」腰痛の力学的な正体です。
【科学的視点】あなたの腰痛はどのタイプ?痛みの発生源は2つ
「かがむと痛い」腰痛の背景には、主に2つの原因が考えられます。これらは痛みの発生メカニズムが異なります。
タイプ1:神経への二重攻撃「腰椎椎間板ヘルニア」
ヘルニアは、椎間板の中身(髄核)が飛び出して神経に触れる状態、と一般的に知られています。しかし、近年の研究では、痛みは単なる物理的な圧迫だけが原因ではないことが研究でも示されています。
実は、飛び出した髄核から**「炎症性サイトカイン」という化学物質が放出されます。これが神経に付着すると、まるで”火事”**のように激しい炎症を引き起こし、強い痛みを発生させるのです。
- 物理的圧迫:飛び出したヘルニアが神経に直接触れる。
- 化学的刺激:ヘルニアから放出される炎症物質が神経を攻撃する。
この**「圧迫」と「炎症」の二重刺激**こそが、腰から足にかけての激しい痛みやしびれ(坐骨神経痛)の本質です。
こんな場所、こんな痛みはありませんか?ヘルニアが発するサイン
ヘルニアによって神経が刺激されると、実にさまざまな症状が現れます。ご自身の症状と照らし合わせてみてください。
■ 症状の出る場所 腰痛はもちろんですが、ヘルニアの大きな特徴は腰から離れた場所にも症状が出ることです。これは、圧迫された神経が支配している領域に沿って症状が広がるためです。多くの場合、左右どちらか片方の足に現れます。
- お尻(臀部)
- 太ももの後ろ側や外側
- ふくらはぎ、すね
- 足の甲、足の裏、足の指
「腰はそれほどでもないのに、お尻や太ももがすごく痛い」というケースも少なくありません。
■ 症状の種類(痛み方) 「痛み」という言葉だけでは表現しきれない、多様な感覚異常として現れるのも特徴です。
- 疼くような痛み:ズキズキ、ジンジンと絶えず続く痛み。
- しびれ:正座の後のようなビリビリ、ピリピリとした不快な感覚。
- 放散痛(ほうさんつう):咳やくしゃみ、排便で力んだ瞬間などに、腰から足先まで電気が走るような鋭い痛み。
- 感覚麻痺:触っても感覚が鈍い、まるで皮膚が一枚厚くなったような感じ。
- 筋力低下:足首や足の指に力が入らず、スリッパが脱げやすくなったり、つま先でうまく立てなくなったりする。
これらの症状は、どの神経が影響を受けているかによって現れ方が異なります。もし腰痛に加えて、このような足の症状が一つでも当てはまる場合は、ヘルニアが強く疑われます。
タイプ2:椎間板自体のSOS信号「椎間板性腰痛」
レントゲンやMRIでは明らかなヘルニアが見つからないのに、かがむと腰の中心が重く痛む。これが「椎間板性腰痛」です。
本来、健康な椎間板には痛みを感じる神経はほとんどありません。しかし、度重なる負担で椎間板が傷つき変性すると、本来あるはずのない異常な痛み神経が椎間板の内部に侵入してくることが、ある研究で報告されています。
この状態でかがむ動作をすると、傷ついた椎間板そのものが圧迫され、内部に侵入した異常神経が興奮し、鈍く重たい痛みを引き起こすのです。
【希望の光】人体の神秘「ヘルニアは自然に小さくなる?」
つらいヘルニアですが、私たちの治癒能力で飛び出たヘルニアを小さくしてくれることもあります。いくつかの研究によると、飛び出したヘルニアは、体の免疫細胞である**「マクロファージ」**によって異物と認識され、**少しずつ吸収・分解されていく(自然退縮)**ことが確認されています。
しかし、これは「放置すれば治る」という意味ではありません。自然退縮を待つ間、激しい痛みを我慢し続けるのは現実的ではありませんし、痛みをかばうことで体の歪みがひどくなる可能性もあります。 重要なのは、体の治癒能力が最大限に発揮できるよう、痛みを的確にコントロールし、回復のための体内環境を整えてあげることです。
当院で「鍼治療」を選択する理由は?科学的根拠に基づくアプローチ
当院では、これらの腰痛に対して「鍼治療」を重要なアプローチの一つと考えています。それは、鍼治療が痛みのメカニズムに対し、科学的かつ多角的に働きかけることができるからです。
- 化学的刺激(炎症)を鎮める 鍼には、ヘルニア周辺で起きている**”神経の火事”(炎症)を鎮める**作用が期待できます。血流を促進させ、炎症物質を早期に洗い流す手助けをします。
- 自然治癒力(マクロファージ)を後押しする 鍼で適切な刺激を送ることで、ヘルニアを吸収してくれる免疫細胞(マクロファージ)の活動を活性化させる効果が期待できる、とする報告もあります。体の”お掃除細胞”の働きをサポートし、治癒を促します。
- 天然の鎮痛物質を分泌させる 鍼治療によって、脳内に**「エンドルフィン」**という、モルヒネによく似た作用を持つ鎮痛物質が分泌されることが分かっています。これにより、つらい痛みの感覚を和らげます。
- 椎間板への負担を根本から減らす 痛みをかばって硬くなった腰やお尻周りの深層筋(インナーマッスル)を、鍼で直接緩めます。筋肉の緊張が解けることで、椎間板にかかる不要な圧力が減り、症状の悪化を防ぎ、再発しにくい体づくりを目指します。
まとめ
「かがむと痛い」腰痛は、原因を正しく理解し、適切な対処をすることが改善への最短ルートです。その場しのぎの対処を繰り返すのではなく、ご自身の体の中で何が起きているのかを一緒に見つめ直してみませんか?
つらい痛みから解放され、快適な毎日を取り戻すために、浦安市、新浦安エリアで専門的な腰痛治療をお探しの方は、ぜひ一度私たちにご相談ください。
【参考文献】
- Nachemson AL. (1976). The lumbar spine, an orthopaedic challenge. Spine, 1(1), 59-71.
- Takahashi K, et al. (1996). Inflammatory cytokines in an animal model of nucleus pulposus-induced nerve root injury. Spine, 21(2), 218-224.
- Freemont AJ, et al. (1997). Nerve ingrowth into diseased intervertebral disc in chronic back pain. The Lancet, 350(9072), 178-181.
- Komori H, et al. (1996). The natural history of herniated nucleus pulposus with radiculopathy. Spine, 21(2), 225-229.