谷田貝です。
はじめに
ふくらはぎの肉離れは、スポーツ活動中や日常生活の動作の中でよく見られます。特にスポーツ中、瞬発力を使う動きをした際に痛めることが多く、適切な治療やリハビリを行わないと高頻度で再発してしまうケースも珍しくありません。
肉離れとは?
肉離れとは筋肉の線維または腱膜を損傷・断裂した状態のことを言います。
スポーツ選手ではふくらはぎ以外にハムストリングスや大腿四頭筋にも好発します。

ふくらはぎの構造(下腿三頭筋)
一般的にふくらはぎと言う場合、私たち医療・スポーツ従事者(アスレティックトレーナー、鍼灸師、柔道整復師など)は「下腿三頭筋(かたいさんとうきん)」を指すことが多くあります。
下腿三頭筋は1番表層にある腓腹筋(内側頭と外側頭)とその深部にあるヒラメ筋から構成されます。
これらの筋肉は歩行やランニング、ジャンプなど地面を蹴り出す際に働き、スポーツ中の動きの中心的な役割を担っています。
肉離れ〜実際にどこを痛める?〜
ふくらはぎの肉離れの中で特に多い部位は腓腹筋内側頭とヒラメ筋と言われています。
腓腹筋にはFGA(遊離腓腹筋腱膜)という筋線維のない腱膜エリアが存在し、この部分の損傷の有無もRTP(Return to Play:競技復帰)に大きく影響します。


腓腹筋内側頭肉離れのタイプ
| type | 特徴 |
| 1 | 遠位筋腱移行部の軽度の損傷。筋間血腫はほぼない。 |
| 2a | 腓腹筋腱膜と筋線維(≦50%)の損傷。軽度の筋間血腫を伴う。 |
| 2b | 腓腹筋腱膜と筋線維(≧50%)の損傷。著明な筋間血腫を伴う。 |
| 3 | 筋間血腫を伴わないFGAの断裂 |
| 4 | 腓腹筋腱膜、筋線維の広範な損傷とFGAの断裂を伴う。著明な筋間血腫。 |
ヒラメ筋肉離れの損傷部位
| 損傷部位 | 特徴 |
| 近位腱弓部 | ヒラメ筋近位の腱弓部に不整。浮腫を伴う。 |
| 内側腱膜 | 内側腱膜の部分断裂や完全断裂を伴うことがある。 |
| 外側腱膜 | 内側腱膜と同様。 |
| 中心腱 | 中心腱はアキレス腱に直接入り込むため最も重篤な場合が多い。 |
| 前方腱膜 | 前方腱膜の不整。浮腫を伴う。 |
| 後方腱膜 | 筋間血腫を伴う損傷。 |
腓腹筋肉離れの受傷機序
腓腹筋の肉離れは通常、ランニング、ジャンプ、切り返しの際など、急激な腓腹筋の遠心性収縮(筋肉が力を発揮しながら伸ばされる)を伴う動作で起こることが多いです。また受傷時に「プチッ」や「バチッ」などのポップ音(断裂音)を伴うこともあります。
ヒラメ筋肉離れの受傷機序
地面を力強く蹴り込んだ時や、ランニング動作などで痛めることが多く見られます。初期症状は「違和感」や「突っ張り感」程度に留まることもあり、痛みが急激に現れにくいため、時間が経ってから発見されるケースも少なくありません。
ヒラメ筋肉離れの落とし穴
ヒラメ筋はほとんどが遅筋線維(より持久力に富んだ筋線維)で構成されているため、ランニングやジョギングなど比較的軽度な動きでも負荷がかかり、再発を招くことが多く見受けられます。リハビリ初期に早期の歩行やジョギングを取り入れる際、ヒラメ筋損傷の場合は特に慎重なリスク管理が求められます。
また、痛みが数時間〜数日で引いてしまうことも多いため、「治った」と自己判断して運動を早期再開し、再発してしまうリスクが高いのも特徴です。
受傷からスポーツ復帰まで
肉離れを管理する上で重要なこと
適切な復帰計画を立てるには、受傷機転・損傷部位・重症度の完全な把握が不可欠です。専門医療機関での画像診断(MRIや超音波エコー等)により、「どの部位をどれくらい痛めているか」を正確に評価することで、復帰時の再発リスクを大幅に軽減できます。
リハビリを進める指標として、特に以下の4点が重要となります:
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圧痛(押したときの痛み)
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ストレッチ痛(伸ばしたときの痛み)
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抵抗時痛(力を入れたときの痛み)
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エコー(超音波)所見
特に超音波エコー検査により、組織の回復状態や動態をリアルタイムで観察しながら、段階的な復帰メニューを選択していきます。
復帰目安について
僕自身の考えで、損傷度合いによっても変わってきますが、軽症でも試合復帰までに最低でも4週はかけたほうが安全ではないかと思っています。これは腓腹筋とヒラメ筋、腱膜の損傷や筋線維の損傷なのかでも変わってきます。
また4週たったから試合復帰ではなく、筋力や可動域、競技特異動作など全てが試合レベルまで戻っているのかまでが重要となります。
まとめ
ふくらはぎの肉離れは、単に「ふくらはぎの筋肉を痛めた」と考えるのではなく、腓腹筋なのかヒラメ筋なのか、さらにどの筋腱移行部・腱膜・筋線維を損傷しているのかを把握することが重要です。
特にヒラメ筋の損傷では、腓腹筋とは異なる負荷特性を考慮しながらリハビリテーションを進める必要があります。
また、痛みがなくなったことだけを基準にスポーツへ復帰すると、十分な筋力や競技動作が回復していない状態で負荷が再び加わる可能性があります。
そのため、「痛みがない=復帰可能」ではなく、組織の状態、圧痛・ストレッチ痛・抵抗時痛、筋力、可動域、ランニング能力、ジャンプ能力、競技特異的動作などを総合的に評価することが重要です。
ふくらはぎの痛みが続いている場合や、スポーツ復帰の時期に不安がある場合には、医療機関などで損傷部位や重症度を確認した上で、段階的にリハビリテーションを進めることをおすすめします。
参考文献:
Pedret C, Palermi S, Mechó S, Ahmad G, Lee JC. Calf muscle injuries in the athlete. Aspetar Sports Medicine Journal. 2025;14.