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【肩の痛みの原因】インピンジメント症候群とは?原因と鍼灸でのアプローチ

こんにちは。鈴木です。

「腕を上げると肩が痛い…」

「なんだか肩が引っかかる感じがする…」

もしかしたら、その症状はインピンジメント症候群かもしれません。

インピンジメント症候群は、多くの方が悩まされる肩の痛みの原因の一つです。

先日谷田貝先生も投稿していました。

オーバーヘッドスポーツによる肩の痛み 記事はこちら

この記事では、

  • インピンジメント症候群ってそもそも何?
  • どんなことが原因で起こるの?
  • 鍼灸師はどんなお手伝いができるの?

といった疑問について、専門的な言葉をできるだけ避け、分かりやすく解説していきます。

インピンジメント症候群ってなに?肩の中で何が起きているの?

インピンジメント(Impingement)とは、「衝突」や「挟まる」といった意味です。

肩関節には、骨と骨の間や、骨と腱(筋肉の端にあるスジ)の間を通るトンネルのような狭いスペースがあります。腕を上げたり回したりする時に、この肩のトンネル(肩峰下スペース:けんぽうかスペース)で、肩の骨(肩峰:けんぽう)と腕の骨(上腕骨:じょうわんこつ)や、そこを通る腱(腱板:けんばん)や滑液包(かつえきほう:潤滑油の袋)などがぶつかったり、挟まったりして炎症や痛みが起こる状態をインピンジメント症候群と呼びます。

イメージとしては、狭いトンネルの中で物がこすれ合って摩擦が起こり傷ついてしまうような状態です。

なぜ起こるの?インピンジメント症候群の主な原因5つ

では、なぜこのような「衝突」が起きてしまうのでしょうか?主な原因を見ていきましょう。

肩のインナーマッスルの衰えや断裂(腱板損傷)

  • 原因を一言でいうと…肩をスムーズに動かすための大切な筋肉(腱板)が弱ったり、切れたりします。
  • どうして起こるの?

・加齢による変化:年齢とともに腱がもろくなりやすく、特に肩のインナーマッスルの一部(棘上筋:きょくじょうきん)には、もともと血の巡りが悪く傷みやすいと言われています。

・肩の使いすぎやケガ:野球の投球や水泳のような腕を繰り返し使うスポーツ、転倒などの外傷が原因となることもあるようです。

・肩の中で何が起きる?

腱板は、腕の骨の先端(上腕骨頭:じょうわんこっとう)を肩甲骨の受け皿(関節窩:かんせつか)にしっかりとはめておく重要な役割を担っています。この腱板が傷つくと、その安定させる力(求心位への安定力)が弱まります。

すると、腕を上げようとするときに、肩の表面にある大きな筋肉(三角筋:さんかくきん)の力で上腕骨頭が上にズレやすくなり、肩の天井部分(肩峰:けんぽう)との隙間が狭くなってしまいます。

その結果、腱板自身や、クッションの役割をする滑液包が、肩の天井部分の骨のトンネル(烏口肩峰アーチ:うこうけんぽうアーチ)とぶつかりやすくなるのです。

補足:腱板の中の棘下筋(きょくかきん)や肩甲下筋(けんこうかきん)は、腕の骨の先端が上にズレるのを抑え、下に引き下げることで肩関節を安定させる働きがあります。これらの機能が低下すると、インピンジメントが起こりやすくなります。この「下方に引き下げる」とは、腱板の筋肉が縮むことで、腕の骨の先端が肩甲骨の受け皿の中央に留まりやすくなり、三角筋などが働いても骨の先端が上にズレないようにコントロールする作用のことです。これにより、肩関節は正常に動き、インピンジメントを防ぐことができます。

 肩の腱に石灰がたまる(石灰沈着性腱板炎)

・原因を一言でいうと…

肩の腱の中に、カルシウムの塊ができてしまうこと。

・どうして起こるの?

腱の中にリン酸カルシウムという結晶がたまることが原因ですが、なぜたまるのか、はっきりとしたメカニズムはまだよく分かっていません。

肩の使いすぎや、体の代謝の異常(例えば糖尿病など)が関係していると考えられています。

・肩の中で何が起きる?

石灰がたまることで腱が腫れたり、炎症が起きたりして、肩のトンネル(肩峰下スペース)を圧迫します。

急性期:石灰がミルクのようにドロドロに溶け出すことがあり、この時に激しい痛みを引き起こします。「夜も眠れないほどの痛み」と表現されることもあります。

慢性期:石灰が硬くなり、動かすたびに物理的にぶつかりやすくなる原因になります。

 力こぶの筋肉の腱の炎症(上腕二頭筋長頭腱炎)

・原因を一言でいうと…

腕の力こぶを作る筋肉(上腕二頭筋)の、肩につながる長い方の腱(長頭腱:ちょうとうけん)が炎症を起こすことです。

・どうして起こるの?

テニスやバレーボールのサーブ、重い物を持ち上げる動作など、肩を繰り返し使うことで炎症が起こります。

他の原因によるインピンジメント(例えば腱板損傷など)の結果として、二次的にこの腱に炎症が広がることもあります。

肩の中で何が起きる?

上腕二頭筋の長頭腱は、腕の骨にある溝(結節間溝:けっせつかんこう)を通って肩関節の中に入り込み、肩の安定にも関わっています。

この腱が炎症で腫れたり、腱を包む膜(滑膜:かつまく)が炎症を起こしたりすると、肩の天井部分(烏口肩峰アーチ)とぶつかるリスクが高まります。

「肩のトンネル」を構成する靭帯の問題(烏口肩峰靭帯の肥厚・骨化)

・原因を一言でいうと…

肩のトンネルの一部を作っている靭帯(じんたい:骨と骨をつなぐ丈夫なヒモ)が分厚くなったり、硬くなったりすることです。

・どうして起こるの?

肩関節に長期間続く炎症や、加齢によって、靭帯が硬く厚くなったり(線維化:せんいか)、時には骨のように硬いトゲ(骨棘:こつきょく)ができたりします。

・肩の中で何が起きる?

烏口肩峰靭帯は、肩の天井部分(烏口肩峰アーチ)を構成する重要な組織です。

この靭帯が分厚くなったり硬くなったりすると、トンネルそのものが物理的に狭くなり、インピンジメントを引き起こしやすくなります。

肩の骨の形の問題(肩峰の形状異常など)

・原因を一言でいうと…

肩の天井にあたる骨(肩峰)の形が、もともとぶつかりやすい形だったり、後から変形したりすることです。

・どうして起こるの?

・肩峰の形:生まれつき肩峰の先端がカギ型に曲がっていたり(フック型肩峰)、トゲのようになっていたりする場合があります。

・加齢や使いすぎによる変形:長年肩を酷使するスポーツや仕事、悪い姿勢などが原因で、肩峰の下に骨のトゲ(肩峰下骨棘:けんぽうかこつきょく)ができることがあります。

・肩の中で何が起きる?

これらの骨の変形によって、肩のトンネル(肩峰下腔:けんぽうかくう)が狭くなり、下にあるインナーマッスル(特に棘上筋)やクッション役の袋(肩峰下滑液包:SAB)が圧迫されやすくなります。

実は神経も関係が?インピンジメント症候群と神経のつながり

筋肉や骨だけでなく、それらをコントロールしている神経もインピンジメント症候群に関わっていることがあります。

神経がダメージを受けると、筋肉がうまく働かなくなり、結果として肩の動きが悪くなってしまうのです。

肩甲上神経(けんこうじょうしんけい)

役割:肩のインナーマッスルである棘上筋や棘下筋を動かす命令を送る神経。

どう関係する?:この神経が肩甲骨のくぼみ(肩甲切痕:けんこうせっこん)や棘下筋の近くで圧迫されることがあり、棘上筋や棘下筋がうまく働かなくなります。すると、腕の骨を下に引き下げる力が弱まり、インピンジメントが起こりやすくなります。

肩甲下神経(けんこうかしんけい)

役割:肩のインナーマッスル、肩甲下筋を動かす命令を送る神経。

長胸神経(ちょうきょうしんけい)

役割:わきの下から胸の横を通って、前鋸筋(ぜんきょきん)という肩甲骨を安定させる筋肉に命令を送る神経。

どう関係する?:前鋸筋がうまく働かないと、腕を上げる時に肩甲骨がスムーズに回転せず(上方回旋不全)、結果として肩のトンネル(肩峰下スペース)が狭くなってしまいます。肩甲骨の不安定さがインピンジメントを招くことがあります。

腋窩神経(えきかしんけい)

役割:肩の大きな筋肉である三角筋や、肩の回旋を助ける小円筋(しょうえんきん)に命令を送る神経。

どう関係する?:この神経がわきの下の狭い隙間(四角間隙:しかくかんげき)などで圧迫されると、三角筋や小円筋の働きが悪くなります。

小円筋がうまく働かないと、腕の骨の先端を関節の正しい位置(求心位:きゅうしんい)に保つことが難しくなり、肩のトンネルが狭くなることにつながります。

首からの神経(頚椎神経根 :けいついしんけいこん)

役割:上記神経の根元の部分。

どう関係する?:頚椎症性神経根症といい、各神経に枝分かれする前の根本の部分です。

腱板筋群への命令がうまく伝わらなくなります。これにより肩関節の安定性が損なわれ、インピンジメントが起こりやすくなります。

当院ができるインピンジメント症候群へのアプローチ

つらいインピンジメント症候群に対して、症状の改善のためにお手伝いできることがあります。

機能障害の起こっている筋への鍼治療

肩のインナーマッスル(回旋腱板)など、機能が低下している筋肉に対して鍼治療を行います。筋肉そのものが硬くなったり、血流が悪くなったりしている場合には、鍼で刺激することで筋肉の状態を改善し、痛みの緩和や動きの改善が期待できます。

しかし、これだけで全てのケースが改善するわけではなく、他のアプローチと組み合わせることが多いです。

各筋を支配している神経に対しての鍼治療 ※末梢〜神経根

各筋肉の機能障害の原因として、その筋肉をコントロールしている神経に問題が潜んでいることも少なくありません。

その支配神経(例えば肩甲上神経や首の神経の根元など)をターゲットとして鍼治療を行うことで、神経の働きが正常化し、筋肉の機能が回復するよう促します。その結果、肩関節が本来の位置で安定し、インピンジメントが軽減されることが期待できます。

石灰化に対しての鍼治療

石灰化のある部分に対して鍼治療を行います。(実際に、肩のインナーマッスルである棘上筋にできた石灰(石灰沈着性腱板炎)に対して、電気鍼治療(鍼に微弱な電気を流す治療法)を行うことで、痛みの軽減や肩の機能改善に有効であったとする研究報告があります。

出典: Electroacupuncture for the treatment of supraspinatus calcific tendinitis: A randomized clinical trial

姿勢不良や動作不良へのストレッチやエクササイズ指導

肩の痛みの原因が、猫背などの悪い姿勢や、肩に負担のかかる間違った体の使い方にあることも少なくありません。鍼灸治療と合わせて、正しい姿勢を保つためのストレッチや、肩に負担の少ない動き方を身につけるための簡単なエクササイズを指導することで、症状の根本的な改善と再発予防を目指します。

※専門医への紹介 正確な病態評価

鍼灸治療で改善が見られない場合や、症状が非常に強い場合、また骨折や腱の完全断裂など、鍼灸の適応範囲外の可能性がある場合は、速やかに整形外科などの専門医への受診をお勧めし、正確な診断と適切な治療を受けていただけるよう連携を図ります。当院では各分野の専門の先生への紹介も行っております。

 

まとめ

  • インピンジメント症候群とは: 肩を動かす際(外転位で)に、肩関節の狭い部分で骨や腱などが衝突・挟まり、炎症や痛みが起こる状態です。
  • 主な原因: 加齢や使いすぎによる肩のインナーマッスルの衰え・断裂、腱への石灰沈着、靭帯の肥厚、骨の形状の問題など、様々な要因が考えられます。
  • 神経も影響: 肩周りの筋肉を支配する神経(肩甲上神経、腋窩神経など)が圧迫されたりダメージを受けたりすると、筋肉が正常に働かず、インピンジメントを引き起こすことがあります。
  • 当院の役割(筋肉・神経へのアプローチ): 鍼灸治療では、機能が低下した筋肉や、その筋肉を支配する神経にアプローチすることで、痛みの緩和や肩関節の機能改善を目指します。
  • 総合的なサポート: 鍼治療に加え、姿勢や動作の改善指導(ストレッチやエクササイズ)を行い、根本的な改善と再発予防を助けます。必要に応じて専門医への紹介も行います。

参考文献

  • Electroacupuncture for the treatment of supraspinatus calcific tendinitis: A randomized clinical trial. (PMC6491911)

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