足やおしりの”しびれ”や”痛み”など、坐骨神経痛様症状に対するはり治療は、痛みやしびれを軽減するための有用な治療法の一つです。日常の臨床経験から、鍼治療の効果に影響を与える要因を特定できることがわかってきました。以下に、その詳細を説明します。
目次
1.はり治療効果が高いケース・低いケース
1.1.【効果高いケース】
効果が高い鍼治療のケースでは、患者様の症状が著明に軽減され、効果が長続きする特徴があります。
- はり刺入時にデルマトーム上に軽い放散痛があること(例えば、L5ならスネの外):エコーで刺入経路を確認しながらゆっくりはりを進めます。すると、患者様は「あっきました」という感じで、デルマトーム上に軽く放散痛を感じます。
- パルス1.0mA以内:低周波パルスを通電させた際に、電流1.0mA以内で患者様はデルマトーム上に「あっきました」とおっしゃいます。
1.2.【効果低いケース】
効果が低い鍼治療のケースでも、患者様の症状は軽減されますが、効果が長続きしない場合があります。
- はり刺入時に放散痛が殿部やハムストリングに広がること:L5神経根の場合、スネの外に放散痛が来ない場合は効果が限定的なことが多い。
- パルス1.0mA以上:パルス1.0mA以上にしないと、デルマトーム上に放散痛を感じない。
- 筋収縮の発生:パルスをかけた際に筋肉が収縮(動く)してしまうケースは効果が限定的な場合が多い。
2.失敗ケースは何故効果が低いのか?
腰椎神経根はりパルス療法で、効果が少ないケースが多いのは
❶殿部やハムストリングに響く
❷パルス1.0mA以上
❸筋収縮する
です。
2.1.❶殿部やハムストリングに響くと効果が低い理由
2.1.1仮説① はり先が神経根より遠位にある
(A)はり先が神経根の近くだと、デルマトーム上(L4ならスネの内側・L5ならスネの外側)に響きを感じます。
(B)はり先が神経根より遠位にあると、殿部やハムストリングに響きを感じます。
足やお尻の”しびれ”や”痛み”は、(A)のデルマトーム上に響きがあった方が効果があるケースが多いです。もし、お尻に”しびれ”や”痛み”があってもそうです。
なぜ(A)はり先が神経根の近くだと効果が高いのか?個人的な仮説ですが、後根神経節という感覚細胞が集まる場所により近い方が、効果があるのかなと考えています。
ですから、なるべく椎間孔の近くにはり先が行くように心がけています。
(A)の成功したケースを短軸でエコーで見てみたら、椎弓のすぐ横をはり先が通過していました。
エコーでターゲットをイメージし、エコーで針先を見ながら”はり”を進めないと無理です。