はじめに
神経痛の「痛み」は日常生活に大きな影響を与えます。
痛みがあるため、
- 出かけられない
- 仕事ができない
- 旅行に行けない
- スポーツができない
- 子どもと遊んであげられない
などやりたいことが満足にできていない方がいらっしゃいます。
そのような痛みから1人でも多くの患者様を救ってあげたいという思いで超音波エコー下鍼治療をおこなっております。
神経痛やしびれ、足の痛みでお悩みの方へ――。
「なぜ鍼治療で痛みが和らぐのか?」その理由を、具体的な体に起こるシステムの話も交えながら解説します。
痛みを和らげる「自然の鎮痛剤」が目覚める
鍼治療を行うと、脳内で「エンドルフィン」や「エンケファリン」といった内因性オピオイドと言われるモルヒネのような強力な鎮痛物質が分泌されます。※イラスト③
これらは外部から投与する鎮痛薬に匹敵、あるいはそれ以上の鎮痛効果を持ち、痛みを感じる神経の働きを抑制します。
特に慢性的な神経痛や椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などによる鋭い痛みには、低周波鍼通電(パルス)が有効とされ、エンドルフィンの分泌が促進されることで数時間にわたり痛みが和らぐことが臨床的にも確認されています。
また、鍼刺激によって「快楽物質」としても知られるエンドルフィンが分泌されることで、心身のリラックス効果や気分の改善も期待できます
神経痛を緩和するメカニズム
鍼刺激は神経周囲の血流を大幅に増加させることが報告されており、血流が最大145%まで増えるというデータもあります。血管が拡張し、酸素や栄養が十分に供給されることで、神経組織の修復が促進されます。また、痛みの原因となる発痛物質や老廃物の排出も進み、炎症や腫れが軽減されます。
筋肉の緊張が緩むことで神経や血管への圧迫が解消され、痛みの悪循環(痛み→筋緊張→血流悪化→さらなる痛み)を断ち切ることができます。鍼治療は、薬や外科的治療に頼らず自然治癒力を引き出す鍼治療ならではの特徴です。
患者様の中には痛みを抑えるために毎日薬を飲んでいる方もいます。毎日の服薬は場合によっては体に悪影響ですので痛みの緩和は大切です。
脳が痛み信号をブロック!「ゲートコントロール」効果
鍼の刺激は、脊髄にある「痛みのゲート(門)」の開閉を調節します。これは「ゲートコントロール理論」と呼ばれ、痛みを伝えるC線維よりも早く伝わるAβ線維(触覚などを伝える神経)が活性化されることで、痛みの信号が脳へ伝わるのをブロックします。※イラスト②
この仕組みにより、下肢のしびれや灼熱感といった神経症状が治療中から軽減されるケースも多く、慢性痛や急性痛の両方に即効性と持続性のある効果が期待できます
治療家・専門家向け:鍼治療と疼痛抑制
下行性疼痛抑制系
刺激 | 効果 |
---|---|
2Hz低周波 | エンドルフィン分泌(持続6-8時間) |
100Hz高周波 | ダイノルフィン放出(即効性あり) |
セロトニン作動系を介した脊髄後角抑制には、20分間持続刺激が有効です。
※ダイノルフィン:疼痛抑制物質 セロトニン作動系を介した脊髄後角抑制:下行性疼痛抑制系
神経炎症制御の分子メカニズム
- 鍼刺激でIL-6、TNF-αが42%減少(p=0.003)
- 抗炎症性IL-10が28%増加(p=0.02)
- L4/L5神経根への刺激でSchwann細胞の再生速度が2.3倍加速
※IL-6、TNF-α:炎症反応誘導物質 Schwann(シュワン)細胞:神経の再生や損傷の修復に関与
当院の神経根パルス療法について
- 神経障害部位の同定(問診、理学所見テストなど)
- 超音波エコーでの神経根をターゲットとした鍼治療
- パルス通電
- 治療後効果評価(直後、次回来院時)
まとめ
鍼治療は、体内の鎮痛物質の分泌促進、神経周囲の血流改善、痛み信号のブロックなど多角的なメカニズムで神経痛を抑制します。
科学的根拠に基づき、患者さん一人ひとりの症状に合わせて最適な治療を提供しています。
神経の痛みで生活の質が下がっている患者様を少しでも減らせるように、関わらせていただいた患者様が痛みを忘れて楽しく生活が遅れるように当院では鍼治療を積極的におこなっております。
お困りの方は1度ご相談ください。
参考文献
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Neural mechanism underlying acupuncture analgesia DOI: 10.1016/j.pneurobio.2008.05.004
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Spinal nerve root electroacupuncture for symptomatic treatment of lumbar spinal canal stenosis unresponsive to standard acupuncture: a prospective case series doi: 10.1136/acupmed-2011-010122
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砂川ら, 神経治療 41:368–372, 2024
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化学療法に伴う疼痛と鍼灸ケア, 2025
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鍼で神経根性疼痛が和らぐ, J-Stage